資料作成が苦手な人が陥る3つのパターン
資料作成が苦手な人には、共通した特徴があります。「センスがない」「頭が悪い」のではなく、特定の思考パターンがスライド作成を難しくしているのです。自分がどのパターンに当てはまるかを把握することで、改善の優先順位が明確になります。
以下の3パターンは、資料作成が苦手という人のほぼ全員がどれかに当てはまります。複数当てはまる人も多いですが、最も強く感じるものを1つ選んで、そこから改善していくのが効果的です。
完璧主義で手が止まる
最初から完璧なスライドを作ろうとして、1枚目に30分かかるパターンです。「まだ完成していない」「もっといいデザインがあるはず」と感じながら、ツールを前に手が動かなくなります。
根本的な原因は、「まず汚くていい」という許可を自分に出せていないことです。資料は最初から完成品を目指す必要はありません。まず内容を箇条書きで埋めてしまい、見た目の整理は後回しにする——この順番に切り替えるだけで、手の止まりが解消されます。
改善の第一歩
タイムリミットを設けてください。「この1枚は5分以内に終わらせる」と決めると、完璧主義が働く前に次へ進めます。
何を伝えたいか曖昧なまま作る
目的・相手・行動喚起が決まっていないのに作り始めるパターンです。「とりあえず作ってみよう」でスライドを埋めていくと、完成した資料を見ても「で、何が言いたいの?」と上司に聞かれる結果になります。
この資料は誰に見せるのか、その人に何を決断・行動してほしいのか、が決まっていないと、資料はどれだけ丁寧に作っても機能しません。スライドを開く前に、「この資料を読んだ相手に何をしてほしいか」を1文で書き出してください。それが決まれば、含めるべき情報とそうでない情報が自然と絞れます。
改善の第一歩
「この資料を読んだ〇〇さんに、〇〇を決めてほしい」という1文を作成前に紙に書く習慣をつけてください。
見た目にこだわりすぎて内容が薄い
デザインや装飾に時間を使い、肝心のメッセージが伝わらない資料になるパターンです。「アニメーションを入れよう」「グラデーションにしよう」と見た目を整えることに注力した結果、資料の中身——何を主張しているか、その根拠は何か——が薄くなります。
デザインは「内容を伝えるための手段」です。まず内容(主張・根拠・事実)を固め、デザインは最後の仕上げとして最小限の時間で行う順番に変えましょう。内容が薄い資料をどれだけきれいにデザインしても、伝わりません。
改善の第一歩
資料作成の最初の30分は、デザイン機能を一切使わず、テキストだけで内容を埋めることに集中してください。
苦手を克服する「型」の習得
資料作成が上手い人は、センスがあるのではありません。「使い回せる型を持っている」だけです。型とは、「過去に多くの場面で通用したスライドの流れ」を体系化したものです。型を知っていれば、最初から構成を考える必要がなく、あとは各スライドに内容を埋めるだけになります。
プレゼン資料の作り方基本でも解説していますが、資料の型は大きく3つに絞れます。この3つを状況に応じて使い分けるだけで、ほぼすべてのビジネス資料に対応できます。
課題→解決策型
使い場面: プレゼン・営業資料・社内提案 全般
最も汎用性が高い基本パターンです。「課題・現状」→「原因・背景」→「解決策」→「期待効果」→「次のアクション」の流れで進みます。
なぜこの型が効くか
聞き手は「自分の問題を解決してくれるか」で判断します。課題を先に提示することで「これは自分事だ」と引き込み、解決策への期待を高めます。提案書・営業資料で最もよく使われる型で、初回提案の80%はこれでカバーできます。
具体的な使用シーン
IT部門向けのセキュリティ提案資料。「現状: 不正アクセスが月3件発生」→「課題: ログ管理が手動で対応が遅延」→「解決策: 自動検知ツール導入で即時対応」→「効果: 被害リスク80%減」の流れで、初回商談からトライアル導入まで2週間で進んだ事例があります。
よくある間違い: 課題を1枚目に置きがちですが、冒頭はサマリー(結論)が効果的です。課題→解決は2〜3枚目から始めましょう。
PREP法(結論→理由→具体例→結論)
使い場面: 報告書・メール・1〜3枚の短い資料
結論を最初に言い、理由と具体例で補強してから再度結論を述べる型です。短時間で意思決定を促す場面に向いています。
なぜこの型が効くか
結論を先に言うことで聞き手が「なぜそうなるのか」を自然に聞きたくなります。理由→具体例の順で根拠を積み上げ、最後にもう一度結論を言うことで記憶に残ります。1スライドのメッセージ構成にも使え、タイトル(結論)→本文(理由+事例)の2層構造として活用できます。
具体的な使用シーン
社内の新ツール導入提案で使用。「結論: 今月中にSlackを導入すべき」→「理由: メール返信遅延でプロジェクト遅延が月2件」→「事例: A社導入後、連絡ロス70%削減」→「結論: 今月中の導入を提案」という構成で、会議で即決を得た事例があります。
よくある間違い: 具体例が抽象的になりがちです。「〇〇社が成功した」ではなく「〇〇社が導入後3ヶ月で残業を月40時間削減した」という数字つきの事例を用意しましょう。
時系列型(過去→現在→未来)
使い場面: 進捗報告・プロジェクト報告・振り返り資料
変化や成長を示すときに最も直感的に伝わる型です。「過去(現状・経緯)」→「現在(進捗・課題)」→「未来(今後の計画・依頼)」の流れで構成します。
なぜこの型が効くか
「どこから来て・今どこにいて・どこへ向かうか」という物語構造は聞き手が無意識に理解しやすいパターンです。特に上司への進捗報告では、「今何が問題で、次に何をする必要があるか」が自然に伝わります。時系列型はグラフ(右肩上がりの折れ線)と組み合わせると視覚的に強くなります。
具体的な使用シーン
事業報告・プロダクトロードマップに使用。「2023年: 月商50万円のスタート」→「2025年: 月商500万円・顧客100社突破」→「2026年: 海外展開と新機能リリースで月商1,000万円へ」という流れで、経営陣への報告会で全会一致の承認を得た事例があります。
よくある間違い: 「過去」の説明が長くなりすぎるケースが多いです。過去は簡潔に1〜2枚にまとめ、「未来(何をするか・何を承認してほしいか)」に重点を置いてください。
スライドデザインの最低限ルール
「デザインセンスがない」という悩みは、実は4つのルールを守るだけで解決できます。センスより「ルールを守ること」の方が重要です。デザインは才能ではなく、守るべきルールの集合体です。
以下のルールには、「やってしまいがちなNG例」と「OK例」をセットで示します。NG例を見て「自分の資料でやっていた…」と気づいたものから、次回の資料で修正してみてください。
フォントは2種類まで
フォントの種類が多いほど、スライドは「まとまりがない」印象を与えます。見出しと本文で1つのフォントファミリーを使い、太さ(BoldとRegular)だけで差をつけるのが基本です。
NG例
見出し・本文・キャプション・タグライン・注釈で5種類以上のフォントを使用
OK例
見出しにNoto Sans Bold、本文にNoto Sans Regularの2種類のみ使用
配色は3色以内
使う色が多いほど視線が散り、何が重要かわからなくなります。ブランドカラー(メイン色)+グレー+白の3色で構成し、強調したい箇所にだけメインカラーを使うのが基本です。
NG例
赤・青・黄・緑・オレンジ・紫・ピンクの7色を使い、どこが重要かわからない
OK例
ブランドカラー(青)+グレー+白の3色のみ。強調は青のみで行う
1スライド1メッセージ
1枚のスライドに複数の主張を詰め込むと、聞き手は「結局このスライドは何を言いたいのか」がわからなくなります。スライドタイトルで結論を言い切り、本文は根拠を3つまでに絞ります。
NG例
「〇〇の現状について」というタイトルに、箇条書きが10個以上並んでいる
OK例
「〇〇の課題は3点ある」とタイトルで主張し、本文に根拠を3つだけ記載
余白を怖がらない
「空白がもったいない」と感じて隙間を埋めようとすると、逆に読みにくいスライドになります。余白は情報の優先順位を視覚的に伝える重要な要素です。要素の周囲に最低16px以上の余白を確保することを意識してください。
NG例
スライドの端から端まで情報を詰め込み、白い部分が見えない状態
OK例
各要素の周囲に意図的な余白。重要な情報が自然と目に入る構成
デザインの詳しい解説は、資料作成の時間を短縮する5つの習慣もあわせてご覧ください。デザインにかける時間そのものを短くする方法を解説しています。
Before/After 比較:苦手な人の資料 vs 克服後の資料
同じ内容でも、型を使うか使わないかで受け取られ方がまったく変わります。「何を伝えたいか」という情報量は同じでも、スライドの構成・見せ方・メッセージの絞り方が変わるだけで、読み手の印象は180度変わります。
以下のBefore/Afterは、同一の提案内容を「型なし」「型あり」で作った場合の比較です。左側がよくある苦手な人の資料の特徴、右側が型を習得した後の資料の特徴です。どのポイントが変わっているかを確認してください。
Before: 苦手な人の典型的な資料
箇条書きが10個並んでいる
読む前に疲れてしまう
タイトルが「〇〇について」で何が言いたいか不明
結論が最後までわからない
フォントが5種類・色が7色使われている
視線が定まらず読みにくい
画像とテキストが重なって読みにくい
情報が埋もれてしまう
After: 型を習得した後の資料
タイトルで結論を言い切り、本文に根拠が3つ
1枚で主張が完結する
タイトルが「〇〇を今月中に導入すべき3つの理由」
読む前から何が書いてあるかわかる
フォント2種類・配色3色のみ・整然としたレイアウト
目が疲れず最後まで読める
1スライド1メッセージで最後まで読める
相手の記憶に残る資料になる
Before例に当てはまる項目が多い人は、まずH2-2で紹介した「課題→解決策型」を1つ覚えて、次の資料に適用してみてください。全部を一気に変える必要はありません。1つの型を繰り返し使うことで、自然と資料の品質が上がっていきます。
「まず真似る」が最速の上達法
資料作成の上達において最も効率的な方法は、「良い資料を真似ること」です。ゼロから独自の構成を考えるより、実績ある型・フォーマット・表現を自分のケースに当てはめる方が、圧倒的に速く上達します。独創性は上達してから出せばいいのです。
真似るとき何を観察するかは「構成の順番・タイトルの付け方・色の使い方」の3点です。これを意識しながら資料を読むと、自分の資料に転用できるポイントが見えてきます。真似る→アレンジする→自分の型に昇華させる、この3ステップが上達の最短ルートです。
社内の高評価資料を真似る
最も身近で使いやすいお手本は、社内で評価された先輩・上司の資料です。「先輩のあの提案書、どうやって作ったんですか?」と直接聞いて、構成を借りましょう。社内で評価された資料は、その会社・業界・受け手にとって最適化された構成です。汎用の型より、自分の業務に直接使えます。
観察ポイント
スライドのタイトルを順番に書き出してみる。構成の流れがわかります。
Speaker Deckで同業他社の資料を観察する
Speaker Deck(スピーカーデッキ)は、スタートアップの調達資料・サービス資料・登壇スライドが無料で多数公開されているサービスです。同業・類似業種の資料を検索すると、プロが作った構成のお手本を大量に入手できます。
見るべきポイントは「何枚構成か」「どの順番でスライドが並んでいるか」「各スライドのタイトルがどう付いているか」の3点です。デザインの参考にするよりも、構成と表現の参考にする使い方が効果的です。
観察ポイント
気に入った資料のスライドタイトルをすべてメモし、自分の次の資料に当てはめてみる。
会社説明会資料を参考にする
採用・IR向けの会社説明会資料は、説明力の高いプロが作成した構成のお手本です。「自社の価値を短時間で伝える」という目的が明確なため、情報の絞り方・順番の付け方が洗練されています。自分が担当するプレゼン資料の構成の参考として活用できます。
上場企業のIR資料や採用ピッチ資料は、企業のWebサイトやSlide Share等で公開されているものが多数あります。「競合他社の会社説明会資料 PDF」などで検索すると入手できます。
観察ポイント
「会社のどんな側面を・どんな順番で・どの粒度で見せているか」を言語化する習慣をつける。
まとめ
資料作成が苦手な原因は「センスがない」ではなく「型・ルール・習慣を知らない」ことがほとんどです。完璧主義・目的の曖昧さ・デザイン偏重という3つのパターンのどれかに当てはまり、それが手を止めているだけです。
課題→解決策型・PREP法・時系列型の3つの型を覚え、フォント2種・配色3色・1スライド1メッセージ・余白確保の4つのデザインルールを守り、社内の高評価資料や Speaker Deck で上手い資料を真似ることが、最短の上達ルートです。
資料作成のさらなる上達には、提案書が通らない原因と改善策もあわせて読んでみてください。なぜ内容が良くても通らないのか、その構造的な原因を解説しています。
今日から始める3ステップ
次の資料で、3つの型のどれかを意識して使ってみる(迷ったら課題→解決策型)
デザインルール(フォント2種・配色3色・1スライド1メッセージ)を守って作る
社内の高評価資料を1つ入手してスライドタイトルを書き出し、構成を分析する
この記事のポイント
- 苦手の原因は「完璧主義」「目的の曖昧さ」「デザイン偏重」の3パターン
- 型(課題→解決策・PREP・時系列)を知るだけで構成に迷わなくなる
- デザインは4ルール(フォント2種・配色3色・1スライド1メッセージ・余白)で整う
- 上達の最短ルートは「社内高評価資料→Speaker Deck→会社説明会資料」を真似ること
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