企画書とは?提案書との違い
企画書と提案書は混同されがちですが、目的が異なります。提案書は「既存の課題に対する解決策を提案する」もの。企画書は「新しい取り組みを企画し、承認を得る」ものです。
提案書は「顧客の課題→解決策→費用」の流れが基本です。一方、企画書は「市場の機会→企画の概要→実施計画→予算→効果→リスク」と、より広い視野で「なぜこの取り組みをすべきか」を論じます。
提案書の書き方を先に学びたい方は「提案書の作り方完全ガイド」を、営業資料全般については「営業資料の構成パターン」をご覧ください。ここからは企画書に特化した構成と書き方を解説します。
企画書の構成テンプレート
企画書は以下の8セクションで構成します。新規事業でも社内改善でもこのテンプレートが使えます。各セクションの重みは企画の種類に応じて調整しますが(後述)、構成の骨格は同じです。
表紙
1. 表紙
企画名・提案者・日付・部署。企画名は「何を・誰に・どうする」を30文字以内でまとめます。
背景・課題
2. 背景・課題
「なぜこの企画が必要か」をデータで示します。市場データ・社内データ・顧客の声など客観的根拠を3つ以上。
企画概要
3. 企画概要
何を・誰に・どう提供するかを1枚で。読み手が3秒で全体像を掴める粒度に凝縮します。
ターゲット
4. ターゲット
誰のための企画かを明確にします。ペルソナまでは不要でも、「30代・管理職・○○に課題を感じている」程度の具体性は必要。
実施計画
5. 実施計画
フェーズ分けしたスケジュールとマイルストーン。「いつ・誰が・何をする」をガントチャート形式で。
予算
6. 予算
初期費用・ランニングコスト・想定売上(または削減効果)。投資回収のシナリオを3段階(楽観・標準・悲観)で。
期待効果
7. 期待効果
定量効果(売上○万円・コスト○%削減)と定性効果(ブランド向上・社員満足度)の両面で記載。
リスクと対策
8. リスクと対策
想定リスク3つと対策。「やめる基準」を含めると承認されやすくなります。
提案書との大きな違いは「ターゲット」と「実施計画」のセクションがあることです。企画書は「誰に対して何をするか」のビジョンを示す必要があるため、ターゲットの定義とフェーズ分けした実行計画が欠かせません。
予算セクションでは、3段階シナリオ(楽観・標準・悲観)を入れてください。1つのシナリオだけだと「楽観的すぎる」と判断される可能性があります。悲観シナリオでも一定の効果が出ることを示せれば、承認のハードルが大きく下がります。
通る企画書の書き方5つのポイント
テンプレートの構成に沿って内容を埋めていくとき、以下の5ポイントを意識すると承認率が上がります。
「Why」から始める
企画書で最も重要なのは「なぜこの企画が必要か」です。背景・課題のセクションで、現状のデータと理想の姿のギャップを示します。「課題がある→だからこの企画→こう解決する」の論理の流れが崩れると、どんなに良い企画でも通りません。数字で語れる課題を最低3つ用意してください。
1枚で企画の全体像を伝える
企画概要は「エレベーターピッチ」と同じ。「何を・誰に・どう提供するか」を1枚に凝縮します。ここで読み手の頭にイメージが浮かばなければ、残りのスライドは読まれません。箇条書き3〜5個で、専門用語を使わず平易な言葉で書くのがコツです。
数字の3段階シナリオ
予算と効果は「楽観・標準・悲観」の3段階で示します。1つのシナリオだけでは「甘い見積もり」と見なされます。悲観シナリオでも最低限の効果が出ることを示せれば、「最悪でも大丈夫」という安心感につながります。標準シナリオを推奨として太字にし、悲観シナリオの撤退基準を明記してください。
ターゲットを絞る
「全社員向け」「すべての顧客向け」は企画書では避けてください。ターゲットが広すぎると「誰のための企画かわからない」と判断されます。「30代の営業マネージャーで、月5件以上の提案を作成する層」のように、読み手が顔を思い浮かべられる具体性が必要です。
実行計画に「判断ポイント」を入れる
フェーズ分けしたスケジュールの各段階に、Go/No-go判断ポイントを設けます。「フェーズ1終了時にKPIを○%達成していれば次へ進む、未達なら見直し」のように、やめる基準を自ら提示することで決裁者は「コントロールできる」と感じます。
「決裁者に刺さる提案書の書き方」で解説しているテクニックは企画書にも応用できます。特に「数字で語る」「リスクを自ら提示する」は企画書でも最重要ポイントです。
新規事業と社内改善で構成を変えるコツ
同じ8セクションのテンプレートでも、企画の種類によって各セクションの重みを変えます。新規事業と社内改善では、決裁者が重視するポイントが異なるためです。
| 観点 | 新規事業 | 社内改善 |
|---|---|---|
| 目的 | 売上・市場シェアの獲得 | コスト削減・業務効率化 |
| 背景データ | 市場規模・競合・トレンド | 現状工数・コスト・社員の声 |
| 効果指標 | 売上・利益・シェア | 工数削減・コスト削減・満足度 |
| 予算規模 | 大きめ(投資型) | 小さめ(改善型) |
| リスク | 市場リスク・競合リスク | 運用リスク・移行リスク |
| 承認のカギ | 市場機会の大きさ | ROIの明確さ |
新規事業の企画書では「市場機会の大きさ」が最も重要です。市場規模・成長率・競合状況のデータを充実させてください。一方、社内改善の企画書では「ROIの明確さ」が鍵です。現状コストと改善後のコストをBefore/Afterで示し、回収期間を明記します。
社内稟議を通す構成については「社内稟議資料の作り方」でさらに詳しく解説しています。社内改善の企画書を作る方はあわせてご覧ください。
よくある失敗3つ
企画書でよく見る失敗パターンです。事前に知っておくだけで回避できます。
課題より解決策から書き始める
「このツールを導入したい」から始まる企画書は通りません。決裁者が知りたいのは「なぜ必要か」です。まず課題を示し、その課題を解決する手段として企画を位置づけてください。課題の説得力が弱いと、どんなに良い解決策でも「今やる必要はない」と判断されます。
ターゲットが広すぎる
「全社員向け」「すべての中小企業向け」と書くと、「誰のための企画かわからない」→「効果が測れない」→「却下」のルートに入ります。フェーズ1のターゲットは最も効果が出やすい層に絞り、成功実績をもとにフェーズ2で拡大する計画にしましょう。
楽観シナリオしかない
予算と効果が1つのシナリオだけだと「甘い見積もり」に見えます。悲観シナリオを含めて「最悪でも○○は確保できる」と示すことで、リスクを理解した上での提案であることが伝わります。3段階シナリオは企画書の信頼性を大きく高めます。
まとめ
企画書は「新しい取り組みの承認を得る」ための文書です。提案書とは目的が異なり、「Why(なぜ必要か)」→「What(何をするか)」→「How(どう実行するか)」→「How much(いくらかかるか)」の流れで構成します。
8セクションのテンプレートに沿い、5つの書き方ポイントを押さえ、新規事業と社内改善で重みを変える——この3つを実践するだけで企画書の質は大きく向上します。AIで企画書を効率よく作りたい方は「提案書をAIで効率化する方法」もあわせてお読みください。
この記事のポイント
- 企画書と提案書は目的が違う。企画書は「新しい取り組みの承認」を得るもの
- 8セクションテンプレートで構成。予算は3段階シナリオが信頼を高める
- 新規事業は「市場機会」、社内改善は「ROI」を重視して書く
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